SaaSの企業にはとにかく様々な英字三文字指標がある。
まず、日々経営をする上でKPIとして見るべき指標だけでも、
- MRR / ARR / CAC / LTV / TCV
インサイドセールスの役割合だって、
- SDR / BDR
マーケティングの概念に広げると
- ABM / MQL / SQL
マーケ用語をさらに組み合わせると
- CPA / CTR / CVR
など例には事欠かない。
SaaSスタートアップ界隈激震のSmartHR資金調達
さて、最近61.5億円の資金調達で国内SaaS界隈で話題になったSmartHRが記憶に新しい。
私管理人のSLも宮田さん(社長)のブログの愛読者で、資金調達で調達した資金の使途ととして、採用に投資しますと言うことを書いたブログを読んだ。その記事内で、
「Churn RateとNRRがとっても重要になってきた」
https://blog.shojimiyata.com/entry/2019/07/26/165422
と言うことに触れていた。
てか、「M」RRじゃないの?
この「NRR」、「M」じゃないの?と言う感じなんだが、NRRで間違っていない。NRRはNet Revenue Retentionの略だ。SaaSビジネスの本質は、月額課金で月額をどれだけ維持してあげていくかが重要だ。
このため、
- (1)解約が起きない
- (2)解約が起きようが、アップセル(orエクスパンション)によって売上が増える
必要がある(後者については、解約によりMRRが下がろうが、それを上回るMRRがアップセルで生まれれば、MRRはプラスだよね!よっしゃ!と言うこと。)
結局カスタマーサクセスの役割は計り知れない
さて、実はこの(1)と(2)を推し進める上で、「カスタマーサクセス」の役割が極めて重要になってくる。
簡単におさらいすると、カスタマーサクセスは、
- マーケがとってきたリード(名刺)に対して
- インサイドセールス(BDR/SDR)が商談設定
- フィールドセールスがクロージングし
- イニシャルセットアップなどが終わってからクライアントに伴走する ← ここ
を指す部隊である。(カスタマーサポートと何が違うの?と言う点についてはまた今度触れます。)
このクライアントに伴走、と言うのはどちらかと言うと「能動的な」伴走になる。つまり、SaaSなので、クライアントは不満を抱くと解約してしまう。そこで、
- 「クライアントがSaaSを導入することで解決したいことが本当に解決できているのか?」
- 「クライアントはちゃんとSaaSを使いこなせているのか?」
を手を変え品を変え解消していく必要がある。この辺のくだりはこの本(通称青本)にとてもよくまとまっている。特にいかに我々SaaSの提供側が「いや、そのくらい使い方わかるっしょ」とクライアントに対してサービス(ソフトウェア)が不便かをあまり考えずに提供してしまっていることに気づかされるのだ。
実は解約防止だけでない、超重要なサクセスの役割:クライアントへのアップセル案内
さて、そんな具合で、カスタマーサクセスが解約の防止にとても重要であることは疑いの余地がないわけだが、同様にアップセルを生み出す部隊として、カスタマーサクセスはまた重要な役目を持つ。そもそもSaaSは基本的にマルチテナントでサービスを提供しているので、常にプロダクトが変化しており、機能追加や仕様の変更に事欠かない。また、クライアントのニーズは日々要望として上がってくるから、
- フィールドセールスが商談をクロージングした地点Aでは特にクライアントに提供できるサービスがなかった
- がしかし、その後プロダクト開発ができ、クライアントに提供できる機能が導入できた
- その機能は有償オプションとしてクライアントに提供が可能になり、クライアントはそのことを知らない
と言うことが起こり得る。
したがって、そのような場合に、クライアントに連絡して、今もそのニーズがあるのかを確かめて、商品を案内し、納得して買ってもらうわけだ。これは、常に「新規顧客を開拓する」ミッションを持って邁進しているフィールドセールスには担うことができない役割だ。(もちろん、フィールドとクライアントの関係性などにより、サクセスに話が行かずに、フィールドにクライアントから直接話が来ることは起こりうる。だが、これはまた別の話だ。)
そう考えると、大型の資金調達をして、人を採用します。それに重要なのはエンジニアとカスタマーサクセスです、と言う宮田さんのブログは的をいてるなぁと感じたのであった。知らんけど。
最後に
ここに書いてることは全て管理人SLの妄想です。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。