- 推定KPI:フリーの期末時点推定MRRは6.6億円
- 直近期末の契約ライセンス数は20.8万。YoY成長率は150%
- 直近1社あたり単価は3千円/月、YoY成長率は107%。
- 最新のfreeeの法人向け料金は3,980円/月。20人以上のERP用途への対応も問い合わせ可能
- 最新の個人事業主向けfreee料金は1,980円/月が標準価格
- 直近のフリー法人向けプランの値上げは2020/2/3より、プラン内容の見直しに伴うプラン変更を推進
- 直近のフリー個人向けプランの値上げは2020/5/1より、各プランで約20%の値上げを実施
- 最新解約率の12ヶ月平均は1.6%
- フリーの従業員数は481人、最新のYoY伸び率は124%
- 最後に
- 最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
推定KPI:フリーの期末時点推定MRRは6.6億円
続いて、フリーの推定MRRについて述べます。なお、こちらは
- ARR / 12(ヶ月)
により算出しています。こちらについては直近の成長率がやや加速していますが、ユーザー数の増加及び後に紹介する値上げの影響などが効いていそうです。
直近期末の契約ライセンス数は20.8万。YoY成長率は150%
はじめに開示資料で公開されているライセンス数の推移を見ていきましょう。開示資料によると直近期末のフリー契約ライセンス数は20.8万で、YoY成長率は150%です。YoYの成長率を見ていると、2012年8月期末から2013年8月期末にかけて418%という大きな成長を遂げた後、200%から徐々にライセンス数成長率も下がりながら、直近のYoYライセンス数成長率も150%近い水準にあるということなんですね。
直近1社あたり単価は3千円/月、YoY成長率は107%。
続いて、freeeの一社あたり単価を調べます。freeeは1社あたりの年間単価を公開しています。こちらで紹介する「計算」KPIとは、この公開情報を12の定数で割り算し、「月間」に直したものです。直近の2020年6月末時点情報では、1社あたり単価は3千円/月でYoY成長率は107%でした。一社あたりのARPUは2016年6月期末時点では約1,240円程度だったので、こちらが一気に3倍近くの水準まで増えている、と言うことですね。
最新のfreeeの法人向け料金は3,980円/月。20人以上のERP用途への対応も問い合わせ可能
こちらは参考情報として、ホームページに載っていたfreeeの法人向け最新料金表を紹介します。見る感じ、一番押しているのが中央の3,980円/月のベーシックプランのようですね。一方、39,800円、要問い合わせのERP用途のサービスも提供しているようですが、こちらは若干価格の桁が変わります。過去の料金表はどのようになっていたのでしょうか。
最新の個人事業主向けfreee料金は1,980円/月が標準価格
こちらは参考情報として、ホームページに載っていたfreeeの個人事業主向け最新料金表を紹介します。見る感じ、一番押しているのが中央の1,980円/月のベーシックプランのようです。freeeは法人と個人事業主の割合やアカウント数を公開していませんが、これらの割合が公開されることがあるとさらに詳しい内訳がわかって、面白いかもしれないですね(私個人としては公開して欲しいですが、競合との関係を考えると、容易に公開しない方が事業的な観点での開示方針、ではないかと思います)。
freeeの法人向け・個人事業主向けの料金表に共通して年払いをしたら割引、と言うのがありました。こちらは見た目の解約率を下げることができ、クレジットカード決済であれば解除をし忘れることで契約が継続すると言うメリットを持っています。freeeの場合、会計データが残るので、長い期間使えば使うほどデータが溜まり、特に利用に際して使いにくいなどの不満がなければ契約解除しづらくなる構造のプロダクトです。このようなプロダクトであれば年払い、と言うのはとても有効に効きそうだなと感じました。
直近のフリー法人向けプランの値上げは2020/2/3より、プラン内容の見直しに伴うプラン変更を推進
こちらは参考情報として、フリーのホームページより直近の法人プラン値上げについて調べたものを紹介します。値上げについては、明確な価格改定と言うよりは、一部のユーザーにとって、移行を促進するように、プラン内の内容を見直し、より高価格帯のプランへ既存ユーザーを誘導することが目的の値上げだった、と言うことがいえそうですね。こちら、解約率が目立って悪化していないので、実質的なヘビーユーザーのみが移行し、解約への影響は限定だったのかもしれません(なお、解約が増えても元も子もないので、おそらくその辺りは解約とのトレードオフを計算してプラン内容の見直しをされているはずです)。このような変更は不可逆なはずなので、今後どのように価格が変わっていくかはとても楽しみですね。
直近のフリー個人向けプランの値上げは2020/5/1より、各プランで約20%の値上げを実施
こちらも参考情報として、フリーのホームページより直近の個人事業主向けプラン値上げについて調べたものを紹介します。値上げについては、明確な価格改定を行っており、ほぼすべてのプランでざっくりと20%近くの値上げをしています。フリーの定義するスモールビジネス、と言うのは個人事業主および従業員が1,000名以下の会社を指すようですので、この影響は企業規模によってかなり異なる(20名と1,000名で全く金額感1,200円と60万円の違いが月額で生じる)と言うことが言えるでしょう。一方で、こちらも法人向けのプランと同じく、解約率の低下が許容できる水準であれば問題ない、と言うことだといえますので、その辺りは内部的には絶妙に設計されてるんでしょうね。
最新解約率の12ヶ月平均は1.6%
続いて、フリーの12ヶ月平均の解約率推移をご紹介します。2020/08/12発表の2020年6月期 第4四半期決算説明資料によれば、2017年6月期末時点の12ヶ月平均の解約率は2.5%だったものが、2020年6月期末時点で1.6%まで低下しています。直近でfreeeは値上げを行っており、こちらも今後どのように推移していくのかが楽しみですね。
フリーの従業員数は481人、最新のYoY伸び率は124%
最後に、フリーの従業員数について述べます。2020年6月期で従業員数は481名。直近1年では124%の伸び率を示しています。マザーズ市場に上場したのは2019年のことですが、2018年6月から2019年6月にかけて、YoY成長率が109%までに下がっていた人数がまた成長してきました。フリーの公開情報からでは、社内の内訳は不明でしたが、今後セールス/開発/サポート/全社の内訳がわかると、とても面白そうだなと感じました。
最後に
直近ARRは80億円に迫る勢い、かつ国内のスモールビジネスを中心に展開するfreee。まだ、値上げができる可能性もありますし、会計から初めてその周辺領域へ今後の進出が起きてくることはほぼ間違い無いのではないでしょうか。今後、マネーフォワードなどの競合との比較を行っていくことがとても楽しみです。(例えば、少なくともフリーが値上げをしたことにより、価格が据え置きであればマネーフォワードは優位になるはずですし、自社も追随して値上げをすることも選択できるはずです。)それでは今回も最後まで読んでいただきありがとうございました!
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。