開示KPI:パイプドHDの直近期末時点ストック比率は約7割

はじめにパイプドHDの期末時点ストック(月額課金)売上比率を見てみましょう。なお、パイプドHDのストック比率は、情報資産プラットフォームによる売上高/全売上高で算出しています。パイプドHDのストック比率は2018年の3月末時点からほぼ横ばいとなっており、クラウド比率が特別に増加しているなどの特徴は見られません。ので、事業構造としては安定した状態にあることが見て取れます。


推定KPI:パイプドHDの期末時点推定MRRは2020年3月期末時点で3.54億円

次に、パイプドHDの推定MRRについて述べます。なお、こちらは
・ストック収入売上高 / 12(ヶ月)
により算出しています。毎年の伸びはそこまで大きく見えませんが、2019年3月期末から2020年3月期末にかけて大きく伸びています。2020/4/20発表の決算説明会資料でもスパイラルが順調に伸びていることがわかりますので、このペースでいくと次回の決算では推定MRRは4億円を超えるかもしれないですね。

パイプドHDの主力サービス、スパイラルの期末時点有効アカウント数は2020年3月期末で3,680社で直近の成長率は103%

こちらは、パイプドHDのスパイラルの有効アカウント数の年次推移です。前身のパイプドビッツ時代は詳細にサービス単位のアカウント数が公開されていましたが、サービス数の増加に伴ってか、アカウント数に関する公開情報はスパイラルの有効アカウント数のみ、となっています。有効アカウント数の伸びは直近はほぼ横ばいとなっており、2019年3月期末から2020年3月期末にかけては103%の伸びとなりました。最新の同社ホームページでは、スパイラルの導入実績は10,000社を突破しているとのことですので、解約などの影響を無視して単純に計算すると無料アカウントからの有効転換率は3割強、ということができるのではないでしょうか。そもそもデータベースを扱うプロダクト、ということで一度導入されるとなかなか解約は起きづらそうなプロダクトではありますが、今後これらの開示がされていくともっと決算資料としてはさらに面白くなりそうな感じはします。

推定KPI:直近のスパイラル平均単価は10万円で、YoYの伸び率は113%

続いて、スパイラルのARPAについて述べます。なお、このARPAは推計のMRR(情報資産プラットフォーム)をスパイラル有効アカウント数で割っており、情報資産プラットフォームがスパイラル以外にも複数のサービスを保有していることから、実態のARPA(平均アカウント単価)はもう少し低いものだと考えられます。スパイラルは、汎用的に使われる特徴と持っている一方、広く普及することができるメリットを持っている一方で、深く入り込むには機能が特化していない、ということでしょうか。ということは今後の展開として、より特化させていって単価をあげる方向に持っていけるか、というところが事業としての目指していくところになるのではないか、と考えられます。
パイプドHDの従業員数は418人、最新のYoY伸び率は90%

最後にパイプドHDの従業員数について述べます。2020年3月期で従業員数は418名。直近1年では対前年比率で89.7%まで従業員が減っています。有価証券報告書によれば、これは2020年が中期経営計画2020の最終年度であり、採用活動を控えたことによるためとのことです。
最後に
たくさんの企業・サービスを抱え、企業に対してデータベースという形でウェブアプリケーションを提供するサービスのスパイラルを中心にサービス展開をしているパイプドHD。これまでご紹介してきたSaaSは、比較的業界や用途が特定部門に特化している特徴がありましたが、その反対に抽象度の高いことも可能なサービス、ということが言えそうです。企業の中では日々データベースを使わないことはないので、ニーズは安定して確保できそうな中、どこまでさらに広げていくか・あるいは特化させて他の打ち出し方をとっていくかは今後も注視して行きたいと感じました。SaaSって、本当にいいものですね!最後まで読んでいただきありがとうございました。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
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