SaaSで重要な3文字と言えば、M(A)RRであることに異論はないと思うんだけど、時価総額を決めるためで超重要な3文字がある。それがTAM(タム、と読む。Total Addressable Marketの略称)だ。
TAMはあるSaaSがサービスとして最大でリーチできる売上規模のことを言う。つまり、例えばERPの市場規模がx兆円あるとして、あなたがERPのSaaSを「仮に」理論上全ての企業に提供できるんだとしたら、あなたのSaaSのTAMはx兆円だと言うことだ。TAMの広さ(ベン図で言う全体集合みたいなの)をユニバースと呼ばれることが多い。なので、「タムのユニバースは~~」みたいな使い方をしたりする。ただソフトウェアを打ってるだけなのに、「ユニバース(宇宙)」と言う言葉が出てくると元理系少年としては胸アツになるこの言葉。
TAMは「Addressable」と言うところが肝で、「あなたの企業がそこにサービスを提供し売るか」と言うところが妥当に示せないと意味がない。つまり、先ほど例であげたERPSaaSをあなたが作り上げることに成功したとして、おそらくそのSaaSは「この業態に強い / この企業規模に強い」みたいな特徴を持っていたりするだろう。だとしたら、あなたの想定すべきTAMは全企業ではなくて、むしろ
- あなたのSaaSが強い企業に導入できる理論売上 = 全企業の数 x 業態の割 x 企業規模の割合 x SaaS単価
だったりする。
※ここの売上がMRRかARRなのかと言う細かい話はあるが、12を割り算するのか掛け算するのかと言うだけの話なので、瑣末な話だろう
もちろん、実際はこんなに簡単じゃなくて、「そもそもそのTAMで捉えている企業のお財布的にお金を出せるのか」は重要な論点だったりする。
正直SaaS企業経営に携わっていると、外向けの値として多少大きめにTAMを捉えて、「夢を語る」フェーズと、実際に予実を合わせに行く文脈で、「堅くTAMを捉える」両方が求められる。このように、正解が全くなく、全てのSaaSで推定・算出根拠が全く異なるであろうTAMもSaaS経営の面白いところだったりする。みんな各種統計をこねくり回したりとか、涙ぐましい努力をしてTAMを算出してたりする。TAMの捉え方をしくじると、経営的にはまあまあ渋いことになるので要注意だ。日々自分を戒めている。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。