はじめに、PSRとPERは以下の略称を指す。
PSR(Price to Sales Ratio): 株価売上高倍率。時価総額を年間売上高で割ったもの。(*1)
PER(Price Earnings Ratio): 現在の株価が1株あたりの純利益の何倍かを指す。(*2)
(*1) 野村證券
(*2) ZAiONLINE
ある企業の時価総額は株価 x 発行済み株式数で求めることができる。PSRとPERはともに企業の時価総額/株価に関係した指標であり、企業に対する評価指標である。特にSaaSは、チャーン(顧客の解約)さえ起きなければ売上は上がり続けるモデルではあるので、「いかにして適切に企業価値を評価するか?」という問いが市場の要請として発生する。
一般的に、上場していて財務情報がしっかりと公開されており、DCF法による企業価値をしっかりと評価できる場合は特に問題がないんだけど、SaaSスタートアップはそもそも上場しておらず、株価も公開されていないが故にその価値価値を評価することがとても難しかった。
そこで現れたのがPSRだ。PERやDCF法は、企業情報を正確に把握しておかないとできないのに対して、単純な売上に対する倍率で企業価値を算出することができる。とは言っても、類似のSaaS企業に対して、売上に対する株価を調べ、その割合(これをマルチプル、と言ったりする。例えば、採用の面接で、「うちのマルチプルは10倍程度」と言われたら、「売上x10倍が時価総額ってことは、時価総額100億なのね」みたいに理解できる)を算出して出すので、あまり個別事情を勘案していない(例えば、プロフェッショナルサービスと月額課金の割合が異なれば、当然収益性は異なるため)正確ではないが、まあ、一つの目安になる。
本当にみんな次から次へといろんなことを考えだすよね。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。