前職の広告会社は、営業の受注管理を「ヨミ表」という表で管理していた。
「ヨミ表」は、各営業が自身の受注目標にたいして、どの程度期待収益が見込まれるかを管理する表を指す。(「表」と言っても実際現場で使うのは、入力用の中央集権的自家製システムであり、そこからみんな大好きExcelにチームもしくは個人単位で値を出力し、A3用紙に出力して、、、ということを毎週やっていた。)この中央集権的な自家製システム(以下、仮に「ニュークリアス」としよう。広告会社はこういう厨二的ネーミングが大好きなのである)に毎日情報を営業現場でニュークリアスに入力し、中央にて企画室がその数値を積み上げ、最終的な期待収益を予測していた。これが、実績のJ、80%のA、60%のB、40%のC、みたいに段階に分かれており、今自分の提案はどうなっていて、その結果数字がどれだけ足りないのかを明らかにするのが営業メンバーの仕事であり、営業マネージャーは「ヨミを管理し、部長やさらに上の役職に報告を上げる」ことが仕事だった。
企画室から、毎日夕方にメールで配信されてくる全国に散らばる営業の成績を見て、営業からオフィスに戻った後、会社から貸与されているラップトップPCを開き、「あ、何々さんはもう目標を達成したのか」だったり、「Xチームは目標を達成するまであと残りこのくらいなんだな」みたいなところを見ていた。
それにしても当時からわからなかったことだったんだけど、「期待収益」という項目があって、ヨミとそのヨミにいる金額の総和を、ヨミの状態に応じて係数を掛け合わせて、算出してたんだけど、あの頃の自分には「なぜ、ヨミという営業の主観が入りまくった情報を元に期待収益を算出できるのか、掛け算はさておいて、その背後にあるロジックの妥当性」が正直言って全くわからなかった。だって、売れる確率だよ?分母は何を使うんだよ?という話である。
今SaaSのスタートアップの経営に関わって、わかってきたことがある。それは、ヨミ表のヨミ、は営業のアスピレーション(営業の意思)で作ってはダメで、営業のフェーズにおける行動と対応づけをしないと意味がない、ということ。つまり、受注確率80%の受注、というものがあるとしたら、申込書はもう送っていて、捺印返送を待っている状態を80%とし、逆に、商談を始めたばかりだと、顧客のニーズがわかったタイミングでようやく20%とするなど。
結局、営業のアスピレーションベースでヨミ管理をすると、営業によってのブレが激しすぎて、均一化できない。さらに、営業マネージャーの役割が、強気・もしくは弱気なヨミの読み直し、ということになってしまう。これって、組織として再現性を高めてビジネスをしていく上ではマイナスでしかない、と私は思う。
もちろん、数字に現れないニュアンスがある商談だってもちろんあると思うし、全てがデジタルな世界ではないということを認めつつ、だからこそヨミは行動管理と照らして行う方が経営もメンバーもハッピーになれるんじゃないか、そんなことをぼんやりと考えた。
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SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
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