ラクスは中小企業向けに楽楽精算、メールディーラーを中心としたクラウドサービスを提供。

さて、直近数回はグループウェアを中心として紹介していましたが、今回は、日本の中小企業を対象に経費精算システムの楽楽精算・メール共有システムのメールディーラーを中心として提供するラクスを取り上げます。2020年10月4日時点で、同社のホームページによれば、ラクスはクラウド事業として、楽楽精算・メールディーラーと合わせて10近いクラウドサービスを提供しています。また、売上高こそ小さいですが、レンタルサーバーも提供しているようです。日本には約400万社の中小企業が存在すると言われており、中小企業を相手にしているということで、非常に大きなTAM(Total Addressable Market)を有する企業である、ということが言えるのではないでしょうか。
ラクスのクラウド事業サービス売上で最も売上高の高いのが楽楽精算、次いでメールディーラー。

2020年5月14日発表の2020年3月期決算説明会資料によれば、楽楽精算の売上高は2020年3月期で約39億円、メールディーラーは17億円ということです。このサービス単体でマザーズ市場に上場できそうな規模の売上ですね。以降はクルメル・配配メールなどを合算したメール配信が15億、残りサービスは10億円未満のサービスが続きます。
2000年に創業後、2015年12月に東証マザーズ上場

ラクスの沿革によれば、同社は2000年にアイティブーストという会社名で設立以来、翌年には現在のIT人財事業になるITエンジニアスクール事業と、現在のクラウド事業につながるクラウド事業を始めています。その後2002年にIT人材事業を開始後は2010年に社名をラクスに変更し、2015年12月には東証マザーズ市場に上場を果たしました。元々は人材系が強かった、というのはこれまでご紹介してきた各社SaaS企業の中でも珍しい部類に入る、ということができるのではないでしょうか。
ラクスの開示KGI(売上高)推移:2020年3月期末で116.1億円。直近YoY成長率は133%

では続いてラクスの売上高から見てみましょう。直近5年の売上高の推移を見ると、売上高の成長率は上場後5年近く経過しても130%を超える高い水準で推移しており、2020年3月期末に100億円を突破し、2020年3月期末時点での対前年成長率は133%でした。
直近のクラウドサービス比率は77.1%

続いて、クラウドサービス(月額課金)の比率について見てみましょう。ラクスの売上高セグメントはクラウド事業とIT人材事業の2つです。クラウド事業の売上比率がクラウドサービス比率であると仮定すると、ラクスの2020年3月期末のクラウドサービス比率は77.1%もあります。また、2020/5/14発表の2020年3月期決算説明会資料より、同社のクラウド事業の占めるクラウド売上比率は直近でも91.7%という数字を出していますので、売上高の7割近くはストック売上である、ということが言えるでしょう。ザ・SaaSの会社、ということがいえそうですね。

次回以降、気になるKPI推移について紹介していきます!ラクスは複数のサービスを、初期セットアップをそこまで取らずに中小企業に提供しているということで料金体系がかなりわかりやすくなっているはずです。特徴的な値付けなど、ラクスを象徴する各プロダクト群に関する分析が非常に楽しみです!
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
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