TL:DR;
- 手間いらずは「価格比較サービス」から出発し、上場後に買収した「宿泊予約コントローラー」サービスで急速に拡大
- 手間いらずは当初「アフィリエイトサイト」の「比較.com」から出発。当初フローサービスが基本のところから見事にSaaS企業への転換を果たしている
- 手間いらずはアフィリエイト広告業務から出発
- 手間いらず の開示KGI(売上高)推移:2019年6月期末で売上高は13.3億円超え
- 直近クラウドサービス比率は97.7%
手間いらずは「価格比較サービス」から出発し、上場後に買収した「宿泊予約コントローラー」サービスで急速に拡大
さて、手間いらずという会社はどのようなサービスを提供しているのでしょうか。2020/2/17発表の2020年6月期 第2四半期 決算説明資料によれば、手間いらずの事業セグメントは
- アプリケーションサービス事業:TEMAIRAZU
- インターネットメディア事業:比較.com
の2つで、それぞれ
- TEMAIRAZU:宿泊予約サイトコントローラー(国内にある予約サイトを一元管理できる予約サイトコントローラー)
- 比較.com:最安値を把握できる価格比較サイト経由のアフィリエイトサービス
を提供しています。
手間いらずは当初「アフィリエイトサイト」の「比較.com」から出発。当初フローサービスが基本のところから見事にSaaS企業への転換を果たしている
さて、沿革を有価証券報告書から見てみましょう。有価証券報告書によれば、手間いらずには
- 2003年8月「比較.com株式会社」設立
- 2006年3月 マザーズ市場上場
- 2007年6月「手間いらず」を買収
- 2015年2月「TEMAIRAZU」を発売開始
- 2017年10月「手間いらず株式会社」に商号変更
- 2020年3月 マザーズ市場から東証一部に市場変更
という歴史があるそうです。これは中々面白い形で始まっていて、
- フロー売上型の企業から出発
- インストール型のソフトウェア販売企業を買収
- インストール型のソフトウェアをSaaSへ転換
という段階を変遷していることが沿革から読み取れます。結構ドラスティックにやっていることが変わっていそう、かつ上場してからの年数もほぼ15年近くあるということで、時期によってどういうセグメント比率だったのかなどを見ることができれば、かなり興味深い情報がありそうな予感がします。
手間いらずはアフィリエイト広告業務から出発
さて、こちらは3期時点の手間いらずの事業報告書です。時期はちょうどマザーズ市場に上場してから半年が経過するということですかね。今のSaaSの片鱗は全く見えません。ここから一気にSaaS企業になったのか、、と考えると年数の重みが事業に及ぼす影響と、当時の経営陣たちがどういう決断で事業買収をし、買収を成功に持って行ったのかなどがとても興味深く感じます。
手間いらず の開示KGI(売上高)推移:2019年6月期末で売上高は13.3億円超え
それではまず売上高から見ていきましょう。直近6年の売上高の推移を見ると、111%〜122%まの範囲で推移しており、直近の2017年6月から2018年6月、2018年6月から2019年6月までのYoY成長率は121%、122%と120%を超えています。上場してから14年が立つ会社が、この売上高成長率で増えるとはかなりの大きな成長率ですね。
直近クラウドサービス比率は97.7%
続いて、売上高のセグメント別構成比率を見てみましょう手間いらずのサービス区分は冒頭にも述べたとおり、2つの区分に分かれており、それぞれ
- TEMAIRAZU:宿泊予約サイトコントローラー(国内にある予約サイトを一元管理できる予約サイトコントローラー)
- 比較.com:最安値を把握できる価格比較サイト経由のアフィリエイトサービス
となっています。なお、有価証券報告書、決算説明会資料にはアプリケーションサービス事業が月額課金モデルか否かの明確な記載はありませんでした。しかし、旅館やホテルは手間いらずが管理するOTA(Online Travel Agency:楽天トラベルやじゃらんなどの予約サイト)に成約課金で支払いをしているはずなので、成約課金の二重課金をしているとは考えづらいです。したがって、アプリケーション事業の割合をクラウドサービス比率として見なしています。インターネットサービスの売上比率が年々減っていることがわかりますね。
次回以降、気になるKPI推移について紹介していきます!手間いらずはこれまでSaaSlifeで取り上げてきたSaaS会社の中でも、「買収」「主要セグメントと副セグメントの主従逆転」という転換を遂げたSaaSであり、これまでとはまた違う特徴を持っているはずで、とても分析が楽しみです!
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SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。