- 計算KPI:エス・エム・エス(カイポケ)の期末時点MRRは4.08億円
- 直近期末のカイポケの拠点数は18,850件。最新YoY伸び率は112.2%
- 参考:カイポケの対象となる事業所TAM(Total Addressable Market)によればカイポケの対象となる事業所数は135,600件
- カイポケの対象とする拠点構成は明確かつサービス拡張でTAMはさらに拡張TAMが拡張
- 直近期末のカイポケARPAは2.16万円。直近期末のARPAYoY成長率は111.0%
- 介護保険サービスのディスカウンターとしてサービス開始、その後経営支援サービスへ拡張し、同タイミングで平均単価をx6.7倍に増額
- 平均単価を6.7倍に増額後、下がっていたカイポケの会員数(拠点数)は復調
- カイポケの拡大先はサービス拡張と事業所種別拡張の2種類
- 2020年3月期の最新従業員数は2,968人。最新YoY伸び率は122%
- 最後に
- 最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
計算KPI:エス・エム・エス(カイポケ)の期末時点MRRは4.08億円
はじめに、エス・エム・エスのMRRについて述べます。なお、今回は、「計算」MRRとしています。この背景には、エス・エム・エスはそのSaaSプロダクトであるカイポケの売上高を有価証券報告書の中で公開しているため、この売上高を12(ヶ月)で割ることで、そのMRRが計算できるためです。計算した結果によれば、2020年3月期末時点の計算MRRは4.08億円でした。直線の傾きが大きくなっていることから、MRRの伸びが加速していることがわかります。
直近期末のカイポケの拠点数は18,850件。最新YoY伸び率は112.2%
続いて、
・カイポケの拠点数
について公開されてるKPIを紹介します。
なお、エス・エム・エスによれば、
拠点数 :事業所所在地を単位としてカウントする 事業所数:介護サービスを単位としてカウントする 例)同じ場所(=1つの住所)で訪問介護、居宅介護支援を運営している場合、拠点数では1、事業所数では2とカウントする。 なお、カイポケは拠点単位で課金している。また、通常、拠点数<事業所数となる
とのことです。このため、公開されているKPIには拠点数と事業所数というのがありますが、拠点数が実質の課金単位ということで拠点数を元に以降は分析を進めます。なお、カイポケの場合、事業所数は拠点数の1.5倍程度です。
2020/4/30発表 2020年3月期 決算および会社説明資料によれば、2020年3月期末のカイポケ拠点数は18,850件であり、最新YoY伸び率は112.2%とのことです。
参考:カイポケの対象となる事業所TAM(Total Addressable Market)によればカイポケの対象となる事業所数は135,600件
では、この拠点数はどのくらいまだ伸び代があるのでしょうか。2016/4/28発表の2016年3月期 決算および会社説明資料によれば、カイポケの対象となる事業所TAM(Total Addressable Market)によればカイポケの対象となる事業所数は135,600件とのことです。つい先ほど述べた通り、カイポケの事業所はカイポケ拠点数(=カイポケの導入単位)に 対して約1.5倍、ということからざっくり9万拠点がTAM、ということが言えそうですね。もちろん、現時点で、TAMの中でもアプローチしやすいところからアプローチしているはずなので、線形に伸びていくことはなさそうですが、現時点での拠点数が2万拠点未満であることからまだまだ伸び代は大きいのではないでしょうか。
カイポケの対象とする拠点構成は明確かつサービス拡張でTAMはさらに拡張TAMが拡張
続いて、
・カイポケの拡大戦略
の概要を紹介している資料を紹介します。こちらは2016/4/28発表の2016年3月期決算および会社説明資料より抜粋した資料です。こちらの資料によると、
・カイポケの対象とする拠点構成は明確、すなわち、半数近くが3拠点以上ある法人となっており、十点機に開拓することでさらにビジネスが延ばせる見込みがある
かつ
・訪問介護、通所リハビリテーション業へサービスを拡張することでTAMはさらに拡張し、結果としてさらにTAMが拡張する
見込みとのことです。TAMの算出は各社の個性が出るところですが、厚生労働省などの公開データを使いながらここまで解像度の高いTAMを拡大の見込み込みで出されてるところはとても面白いですね。
直近期末のカイポケARPAは2.16万円。直近期末のARPAYoY成長率は111.0%
続いて公開されているカイポケのARPA推移(拠点単価)の推移を紹介します。公開情報による推定(カイポケ売上高/12ヶ月/拠点数)よれば、
・直近期末のカイポケARPAは2.16万円
・直近期末のARPAYoY成長率は111.0%
とのことです。導入拠点数も増えて単価も増えている、ということがわかりますね。
介護保険サービスのディスカウンターとしてサービス開始、その後経営支援サービスへ拡張し、同タイミングで平均単価をx6.7倍に増額
続いて、単価についてさらに理解を深めるために、一部拡大戦略のサマリ資料と重複しますが、
・カイポケの拡大戦略の道筋
をまとめている公開資料を紹介します。こちらは2017/4/28発表の2017年3月期決算および会社説明資料より抜粋した資料です。こちらの資料によると、
・カイポケは初めに介護保険サービスのディスカウンターとしてサービス開始
・その後経営支援サービスへ拡張
・サービス拡張と同じタイミングで平均単価を6.7倍に増額
しています。
平均単価を6.7倍に増額後、下がっていたカイポケの会員数(拠点数)は復調
単価を上げたことで下がった会員数も、3年をかけて復調してきたとのことです。会員数の離脱が起きた後も復調しているということで、サービスがしっかりと事業所のニーズを捉えていることがわかりますね。
カイポケの拡大先はサービス拡張と事業所種別拡張の2種類
こちらはすでに紹介したサービス拡張と事業所種別拡張という2種類が拡大戦略、ということがわかりやすく整理された公開資料です。今後もさらに拡大していくことが期待できますね。
2020年3月期の最新従業員数は2,968人。最新YoY伸び率は122%
最後に、エス・エム・エスの従業員数について述べます。こちらはカイポケ事業単体ではございませんので、ご注意ください。2020年3月期の最新従業員数は2,968人で、最新YoY伸び率は122%とのことです。従業員が3,000人にせまる勢いとなっており、過去紹介してきたSaaS各社と比べてもとても大きいことがわかります。
最後に
今回取り上げたエス・エム・エスは、介護領域に特化したバーティカルSaaSを提供しており、そこの市場シェアをさらに伸ばしていくフェーズにあります。今後もさらにSaaS事業であるカイポケの売上比率は上がっていくはずなので、どこまで上がっていくのか、拡大戦略の中に描かれている拡大がどのように行われていくのかが楽しみです。最後まで読んでいただきありがとうございました!
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。