- 推定KPI:セールスフォースの推定期末時点MRRは1,337億円
- 公開KPI:地域別でセールスフォース売上が最も大きい地域は南北アメリカで全体の約7割を占める
- 公開KPI:最も成長率が高いのはヨーロッパで、昨年同時期比134%
- 参考:セールスフォースはグローバルCRM市場でno1、第二位のオラクルとも大差をつけてシェア拡大中
- 参考:セールスフォースのTAMはCAGR10%近くで成長中
- セールスフォースのプロダクトはあらゆる業界・企業サイズに多岐にわたるプロダクトを提供。
- セールスクラウドの料金体系は、月額費用が1ユーザーあた3,000円〜18,000円。最も使われているのは18,000円のプランで、プランにより利用可能な機能による制限があることが特徴。
- サービスクラウドの料金体系は、月額費用が1ユーザーあた3,000円〜18,000円。最も使われているのは18,000円のプランで、プランにより利用可能な機能による制限があることが特徴。
- 推定KPI:セールスクラウド・サービスクラウドのユーザー数はそれぞれ200万人を突破。コマースクラウドがセールスクラウドに肉薄中。
- 参考:セールスフォースの売上減衰率は月次換算で0.8%まで改善
- セールスフォースの従業員数は2020年1月末の状況で4.9万人、最新のYoY伸び率は136%
- 最後に
- 最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
推定KPI:セールスフォースの推定期末時点MRRは1,337億円
はじめに、セールスフォースの推定MRRについて述べます。なお、こちらは
・開示されているセールスフォースのストック売上高(Professional servicesを除いた売上) / 12(ヶ月)
の計算によって算出しています。なお、こちらは2020年1月期末の情報であることにご注意ください(Slackを含んでいません)。これだけ見ると、MRRだけで日系SaaSの通期売上合算を軽く超えており、米国SaaSのすごさを改めて感じます(東京ドームの例えを適用するとしたら、ざっくりラクスの通期売上を130億円と仮定してもラクス10個分、かつその売上を単月で上げてる、ということです。半端ないですね!!)。
公開KPI:地域別でセールスフォース売上が最も大きい地域は南北アメリカで全体の約7割を占める
こちらはセールスフォースの地域別売上構成比率です。公開されている情報ベースでは、大きく3つの地域に分類しており、南北アメリカ(Americas)、ヨーロッパ(Europe)、アジア(Asia Pacific)の3つに分類されています。日本で発生する売上はアジア(Asia Pacific)の中に売上が含まれているようですね。
公開KPI:最も成長率が高いのはヨーロッパで、昨年同時期比134%
次に地域別の売上高伸び率を紹介します。全体を通した売上の成長率は2019年1月から2020年1月にかけて、前年同期比129%となっており、地域別に見ると最も成長率が高いのはヨーロッパで、昨年同時期比134%ということです。
参考:セールスフォースはグローバルCRM市場でno1、第二位のオラクルとも大差をつけてシェア拡大中
次にセールスフォースのティッカーシンボルであるCRMの関連プレイヤーとその成長率を紹介します。こちらはセールスフォースの決算説明資料からの抜粋ですが、CRMという市場において、IDC(International Data Corporationというアメリカの調査会社)のデータを自社で加工して出しているものだそうです。IDCの詳細な集計方法はわかりませんが、CRM市場の主要プレイヤーの中には、オラクル、SAP、マイクロソフト、アドビがおり、セールスフォースが圧倒的に高いシェアを誇っていることがわかります。この辺りの競合を具体的に社名公開して決算資料に盛り込むところは、日系SaaSでは珍しいかと思うのですが、シェアに対する磐石な自信がある、ということが決算資料からも伝わってきますね。
参考:セールスフォースのTAMはCAGR10%近くで成長中
続いて、セールスフォースが認識しているTAM(Total Addressable Market)を示します。こちらもCRM市場におけるシェアの推移と同じく、決算資料より抜粋してきたグラフです。グラフは、ガートナーの公開している情報をセールスフォースにて加工した内容になりますが、セールスフォースの取り組んでいるプロダクト群のインテグレーション(連携)、コマース(小売)、アナリティクス(分析)、マーケティング、サービス、プラットフォーム、セールス(営業)などのカテゴリにおいて、ざっくりと6年間の年間平均成長率(CAGR:Compound Average Growth Rate)は10%くらいの水準にあり、一番低いものでアナリティクス(分析)の8%、一番大きいものでマーケティングの14%だということです。市場が伸びると同じシェアの割合で売上が伸びる、とざっくり仮定するのは乱暴ですが、業界の成長よりも会社の売上成長の方が高い伸びを示しているので、セールスフォースは極めて高い営業力・業界に対する影響力がある、ということが言えるのではないでしょうか。
セールスフォースのプロダクトはあらゆる業界・企業サイズに多岐にわたるプロダクトを提供。
こちらはセールスフォースの提供するプロダクト別の概要と主要機能です。セールスフォースの提供するプロダクトはセールスクラウド、サービスクラウド、セールスフォースプラットフォーム、マーケティング/コマースクラウドの4つの群に別れます。全てのロゴが、セールスフォースの青いクラウドロゴによって表現されており、統一感があってかっこいいですね。なお、この後詳しく解説しますが、セールスクラウドとサービスクラウド以外は明確な料金が公開されておらず、問い合わせが必要でした。おそらくですが、こちらについては、従量課金の要素が入っていたり、やや大企業(エンタープライズ)向けのサービスであり、細かい条件によって値付けが異なるのではないかと推測されます。一方、これから触れるセールスクラウド、サービスクラウドについては、スタートアップからエンタープライズまで、企業サイズを問わずに提供する特徴があり、その結果として料金表を公開しているものと思われます。
セールスクラウドの料金体系は、月額費用が1ユーザーあた3,000円〜18,000円。最も使われているのは18,000円のプランで、プランにより利用可能な機能による制限があることが特徴。
では初めにセールスフォース売上のざっくり25%を占めるセールスクラウドについてご紹介します。セールスクラウドは月額費用が1ユーザーあた3,000円〜18,000円と広く、最も使われているのは18,000円のプランで、プランにより利用可能な機能による制限があることが特徴です。これまでこのサイトでご紹介してきたARPUで、1ユーザーあたりが1万円を超えるところは珍しかった(強いていうならばユーザベースのARPAが10万円を超えていたくらい)ですが、SaaSとしては高単価な部類に属する、ということが言えそうです(参考:チャットワークのARPUは数百円)。なぜこのような高単価販売が可能なのか、について考えると、セールスフォースを導入する企業の至上命題である売上の増加に直結していることがその理由なのではないか、と私は考えています。この辺りもSaaS別の特色が色濃くでて、本当に面白いですね。
サービスクラウドの料金体系は、月額費用が1ユーザーあた3,000円〜18,000円。最も使われているのは18,000円のプランで、プランにより利用可能な機能による制限があることが特徴。
続いて同じくセールスフォース売上のざっくり25%を占めるサービスクラウドについてご紹介します。セールスクラウドと全く同じ料金表出てきたなという感じではありますが、こちらもセールスクラウドと同様の料金体系になっているようですね。
推定KPI:セールスクラウド・サービスクラウドのユーザー数はそれぞれ200万人を突破。コマースクラウドがセールスクラウドに肉薄中。
続いて、セールスクラウド、サービスクラウドの推定ユーザー数を、各サービスの売上高に対して、プロフェッショナルサービス比率が0、かつ月額の単価が1ユーザーあたり18,000円/月と仮定したユーザー数の推移を紹介します。こちらのグラフによれば、2020年1が月末でセールスクラウド、サービスクラウドはともに200万人を超えるユーザーがおり、コマースクラウドの伸び率はセールスクラウドに追いつく勢いで加速していることがわかります。今回ご紹介するデータは2020年1月期末までの情報で、コロナ禍の影響を含んでいません。このため、この後の伸びがどの程度影響を受けるかは、次の通気決算が出てからのご紹介になりますが、この凄まじい伸びが1年でどう変わったのか、という点はとても興味があるところです。
参考:セールスフォースの売上減衰率は月次換算で0.8%まで改善
続いて、セールスフォースの売上減衰率に関して、公開されているものをご紹介します。こちらは決算説明会資料より抜粋した売上減衰率(Revenue Attrition Rate)のグラフです。こちらは、前の年の同じ時期に発生した売上が、今年いくらになったのか、の比率を表しているグラフです。FY10の時点では、売上の減衰率が年次で-22%だった(つまり、FY2009の売上が100ドルだったとすると、FY2010には88ドルまで減少した、ということです)ものが、FY20の時点ではなんと-9%まで改善しているとのことです。こちらは月次の減衰率に換算すると、FY10の時点では1.9%だったものが、FY20では0.8%まで改善しているということで、売上を立てながら、解約も防いでいるということが言えるでしょう。この辺りは、セールスフォースの提供しているプロダクトが、商談管理から小売情報の管理へセールスクラウドからコマースクラウドに徐々にシフトしているところなども影響していそうですね。
セールスフォースの従業員数は2020年1月末の状況で4.9万人、最新のYoY伸び率は136%
最後に、セールスフォースの従業員数について述べます。2020年1月期で従業員数は4.9万人とのことです。さすが、米国内だけに止まることなく、全世界をその対象としてサービスを提供してるだけあって、規模が桁違いですね。この規模になっても直近の3年はYoY成長率が加速している、というところがもはや何が起きてるのか、というくらいのスケールです。
最後に
最近ビジネスチャット、スラックの買収で話題になったセールスフォースについて調べました。もともとSaaSの始祖として有名なセールスフォースをいつかこのサイトでも取り上げたいと私はかねてから思っていました。調べた結果、始祖でありながら圧倒的な成長をし続けているということがわかり、SaaSって本当に奥深いんだなということを再認識した次第です。また2021年の3月には最新の通期決算が出るはずなので、こちらがスラックの買収によりどう変化したのか、する見込みなのかという説明があるはずだと思います。非常に今から来年が楽しみです!最後まで読んでいただきありがとうございました。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。