- 推定KPI:チャットワークの推定期末時点MRRは1.3億円
- 参考:チャットワークの料金体系はフリーミアムに始まり、400円、500円、800円の合計4レンジ。プランによる違いは利用可能機能への機能制限の有無
- 直近期末のチャットワーク利用企業数は24.6万社、YoY成長率は121%
- 直近期末のチャットワーク登録ID数は308万ID、YoY成長率は127%
- 直近期末のチャットワークDAUは69.2万DAU、昨対成長率は118%
- 直近期末のチャットワーク課金ID数は39.7万ID、YoY成長率は117%
- チャットワークのARPU、ARPAを推定する上を仮定して算出。仮定の量が多いのはARPAの方
- 直近期末の推定ARPU(契約単位の月額料金)は336円。
- 直近期末のARPU(契約会社単位の月額料金)は4,206円で1ID400円と仮定すると13ID/企業。
- チャットワークの従業員数は2019年12月末の状況で107人、最新のYoY伸び率は118%
- 最後に
- 最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
推定KPI:チャットワークの推定期末時点MRRは1.3億円
はじめに、チャットワークの推定MRRについて述べます。なお、こちらは
・開示されているChatwork事業売上高 / 12(ヶ月)
の計算によって算出しています。なお、こちらは2019年12月期末の情報であることにご注意ください。2018年12月期末から2019年12月期末にかけて、MRRが大きくなっています。単年でのざっくりMRRの伸長ペースは4,000万円ということがいえそうですね。なお、Chatworkはフリーミアムモデルを導入しているSaaSであり、無料の範囲で使っているユーザーにとっては、広告が表示されるようになっています。このため、Chatwork事業は広告事業を含んでいる金額になっていますが、広告による売上は無視できるものとみなして今回の分析を行っていますので、ご注意ください(すなわち、実態のMRRはもう少し小さいはずです)。
参考:チャットワークの料金体系はフリーミアムに始まり、400円、500円、800円の合計4レンジ。プランによる違いは利用可能機能への機能制限の有無
こちらはチャットワークのホームページから抜粋した2020/12/4時点の料金表です。明確に料金体系が公開されており、フリーミアムに始まり、400円、500円、800円の合計4レンジがあります。それぞれのプランによる違いは広告の表示/非表示、ユーザー管理、外部ユーザーの招待制限、シングルサインオンなど、企業のサイズが大きくなるにつれて、セキュリティなどの面で要求が上がる部分で制限を設けているようですね。
直近期末のチャットワーク利用企業数は24.6万社、YoY成長率は121%
続いて、公開されているチャットワークの利用企業数(無料、課金合算)の推移を紹介します。2019年の利用企業数の昨対成長率は121%で、順調に伸びています。
直近期末のチャットワーク登録ID数は308万ID、YoY成長率は127%
続いて、公開されているチャットワーク登録ID数の推移がこちらのグラフです。こちらは若干利用社数よりも増えているようです。
直近期末のチャットワークDAUは69.2万DAU、昨対成長率は118%
続いて、公開されているチャットワーク製のDAU推移がこちらのグラフです。全ユーザー数(=ID数)が308万IDということは、ざっくりと25%(4IDに1ID)は使っているということが言えそうですね。ビジネスチャットはEメールの代替品としてチャットワークも押していますので、Eメールくらい使われる、ということでしょうか。課金ユーザーのうちのDAUについては公開されていませんが、(無料IDのユーザーは登録だけ済ませて使わないことも起こりうるので)さらに高い値になってそうですね。
直近期末のチャットワーク課金ID数は39.7万ID、YoY成長率は117%
続いて、公開されているチャットワークの課金ID数の推移がこちらのグラフです。2018年から2019年にかけてやや成長率が落ちましたが、それでも117%の昨対成長率を示していることがわかります。
チャットワークのARPU、ARPAを推定する上を仮定して算出。仮定の量が多いのはARPAの方
続いて、公開情報からチャットワークのARPU、ARPAを推定する上で行った仮定について紹介します。まず、前提として、ARPU、ARPAそれぞれの算出において、Chatwork事業の売上がすべて月額課金によるものである(つまり、広告による売上は僅かで無視する)という仮定をおいています。そのあとは構造的に分解できるので、ARPU、ARPAでChatwork事業の月額売上の構成要素を想定して算出をしています。
具体的には、
- ARPU = Chatwork事業売上 ÷ 課金ID数
- ARPA = Chatwork事業売上 ÷ 課金アカウント数(ここは後2段階分解)
直近期末の推定ARPU(契約単位の月額料金)は336円。
続いて、先ほどの仮定をおいて求めたチャットワークの契約ID単位の月額料金を求めたものを紹介します。推定ベースで、チャットワークの2019年12月期末のARPUは336円となっています。有料契約の下限は400円/IDとなっているので、考えられる可能性としては以前は400円よりも小さい金額で提供をしており、こちらの料金のユーザーが圧倒的にいる可能性が考えられます。しかし、web.archieve.orgなどにも過去の履歴は残っていませんでした(2018年の料金表はあった一方で、既に400円が下限)。直近で2016年、2019年にビジネスプランの料金改定についてを発表していますが、こちらは単価が上がる方向なので、過去の金額についてはわかりませんでした。しかし、一番のボリュームゾーンは400円の価格帯ということが言えそうですね(もしくは、想定以上に広告の売上がChatwork事業に含まれている?)。
直近期末のARPU(契約会社単位の月額料金)は4,206円で1ID400円と仮定すると13ID/企業。
続いて、公開されている情報から計算したチャットワークのARPA推移がこちらのグラフです。なお、ARPAのAは契約済社数です。みる限り、ARPAは4,206円で、IDの単価を400円と仮定すると13IDが契約されているようです。ここからも、基本的には中小企業の中で使われている、ということが言えそうですね。
チャットワークの従業員数は2019年12月末の状況で107人、最新のYoY伸び率は118%
最後に、チャットワークの従業員数について述べます。2019年12月期で従業員数は107名とのことです。直近までは昨対成長率が若干減少傾向にあったところが、2018年12月期末から2019年12月期末にかけて、再度伸びていますね。職種やセグメント単位の従業員数は2018年以前は不明でしたが、特徴として、セキュリティ事業に関わる人は今0人、ということで特にセキュリティ事業についてはもう伸ばす感じではない、ということを人材の配置からも決めている、ということなのでしょうね。
最後に
最近セールスフォースによるスラック買収がニュースになっていますが、和製ビジネスチャット、チャットワークのKPIを調べました。個人的には、スラックも普段の仕事で使っているので、スラックしか知らないのですが、ユーザベースと同じく、和製から世界へ、というところがとてもチャットワークには応援している企業です。今回紹介した決算期にはコロナ禍以前のデータですので、今後の通期決算が出てくることで、2020年の状況を再度分析するのが楽しみです!最後まで読んでいただきありがとうございました。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。