- マネーフォワードのプロダクトセグメントはクラウドERPのBusiness、資産管理サービスのHome、金融機関向け資産管理のX、既存データを活用したFinanceの4つから成り立つ。
- 2012年に5月にマネーブック株式会社として創業後、商号変更を経て2017年9月には東証マザーズに上場
- マネーフォワードの開示KGI(連結売上高)推移:2020年6月期末で71.5億円、直近YoY成長率は156%
- マネーフォワードの開示KGI(単体売上高)は2020年6月期末で69.2億円、直近YoY成長率は151%。
- サービス別構成比率では売上高割合が最も多いのがBusinessドメイン。次いでHome、X、Financeドメインの順番。
- 直近の推定ストック売上比率は71.9%
- マネーフォワードのストック売上推定方法
- 最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
マネーフォワードのプロダクトセグメントはクラウドERPのBusiness、資産管理サービスのHome、金融機関向け資産管理のX、既存データを活用したFinanceの4つから成り立つ。
はじめにマネーフォワードの各プロダクトについてご紹介します。こちらはマネーフォワードの抱えているプロダクトの一覧です。マネーフォワードは単一の事業セグメントで各種情報の開示を行っていますが、売上高については、4つのプロダクト群からなるセグメントにて開示を行っています。具体的には、
- Business:クラウドERP(クラウド会計を中心とした各種サービス)
- Home:個人の資産管理サービス
- X:金融機関の代わりに個人の資産管理サービスを提供(HomeのOEM)
- Finance:既存のデータを活用した新規事業を実施
の4つから売上高が構成されています。それぞれ、数え上げるとプロダクト(サービス数は)
- Business:18
- Home:7
- X:4
- Finance:4
となっており、特にBusinessで提供しているサービスの多さが目立ちます。
直近このサイトでも取り上げたフリー(freee)については、こちらでいうとややBusinessのプロダクトセグメントとかぶっている、ということが言えるでしょうか。ただ、今後、freeeもこれまでに溜まったデータの利活用は確実に考えているはずなので、いずれはFinanceと競合する形になってきそうですね。
なお、以下は参考として、マネーフォワードの四半期決算説明会資料より抜粋してきた各プロダクト群とユーザーとの対応関係を表した図です。各プロダクト群の提供先は士業/法人/個人事業主/個人/金融機関と幅広いのが特徴です。
2012年に5月にマネーブック株式会社として創業後、商号変更を経て2017年9月には東証マザーズに上場
続いてマネーフォワードの沿革についてご紹介します。マネーフォワードの沿革によれば、同社は2012年にCFO株式会社という名称で設立されています。奇しくも、フリーの前進であるCFO株式会社とほぼ同時期の設立なんですね。
設立の翌年にはPFMサービス(Personal Financial Managementの略称で、個人の金融資産管理、家計管理をサポートするサービスのこと)である現在のマネーフォワードMEをリリースしています。その翌年にはマネーフォワード For BUSINESS(現在のマネーフォワード クラウド会計・確定申告)をリリースしており、この頃には現在の主要なプロダクトが出揃っていることがわかります。マネーフォワードは、ロゴがオレンジを基調としていますが、このように最初は個人向けに作ってきたサービスが前身だった、ということが影響していそうですね(実際、マネーフォワードFor BUSINESS関連のプロダクトのロゴは青いロゴとなっており、ビジネス用途な印象を受けます)。
その後は2015年11月に金融機関向けマネーフォワード(現在のマネーフォワードfor○○)をリリースし、2017年9月には東証マザーズに上場を果たしています。上場する前からも連結後会社を設立したり、スマートキャンプ株式会社の発行済株式を取得したりと、様々な会社を作って、吸収して大きくなってきたんですね。
マネーフォワードの開示KGI(連結売上高)推移:2020年6月期末で71.5億円、直近YoY成長率は156%
では続いてマネーフォワードの連結売上高から見てみましょう。直近2年の連結売上高の推移を見ると、売上高の成長率はYoYで150%を超えており、力強く成長していることがわかります。一方、こちらはマネーフォワードファイン株式会社、MF KESSAI株式会社、MF HOSHO株式会社、株式会社クラビス、株式会社ナレッジラボ、株式会社ワクフリ、マネーフォワードシンカ株式会社、スマートキャンプ株式会社、MONEY FORWARD VIETNAM.CO., LTDと二社非公開の子会社を含んでいるため、マネーフォワード単体での売上高推移を見てみましょう。
マネーフォワードの開示KGI(単体売上高)は2020年6月期末で69.2億円、直近YoY成長率は151%。
では続いてマネーフォワードの単体売上高から見てみましょう。直近5年の単体売上高の推移を見ると、それでも売上高の成長率はYoYで300%超えの水準から下がってきているものの140%を超えており、力強く成長しています。
サービス別構成比率では売上高割合が最も多いのがBusinessドメイン。次いでHome、X、Financeドメインの順番。
続いて、マネーフォワードの売上高を構成するサービスの構成比率について見てみましょう。2020年2月20日に発表された第8期の決算説明資料によれば、マネーフォワードの構成比率は売上高の多い順に
- Business
- Home
- X
- Finance
ドメインの順番になっています。ただ、有価証券報告書ベースでは、各ドメインにストック売上とフロー売上の要素が入っていることはわかる一方で、詳しいストック売上高比率は不明でした。そこで、今回も開示資料(四半期末時点のARR推移)からのなるべく合理的な推定を試みます。
直近の推定ストック売上比率は71.9%
続いて、ストック売上(月額課金)の比率について見てみましょう。マネーフォワードは、各四半期のARRに売上を、四半期末時点のMRRの12倍として公開しています。以上を元に推定すると、直近のストック売上比率は71.9%となります(算出の方法は後述します)。競合である領域の多いフリーと比べると、フリーは自己申告ベースで90%はストック売上であると情報を公開しているため少し下がって見える感じはあります。一方で、これはSaaSに限定することなく多方面に展開する以上、避けられないことなのではないかなと思います。各社特色が出て面白いですね!
マネーフォワードのストック売上推定方法
最後に、マネーフォワードのストック売上の推定方法を紹介します。マネーフォワードはARRの推移を公開しています。ARRは翌年も発生することが見込まれる売上なので、単純にこれの期中平均値を算出して、この期中平均値が通期のストック売上だと仮定し、こちらが全売上高に占める割合をストック売上比率と仮定しました。
次回以降、気になるKPI推移について紹介していきます!マネーフォワードはフリーと比べてプロダクトが多く、フリーとの違い含めてかなり分析が非常に楽しみです!最後までお読みいただきありがとうございました。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
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などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。