- 推定KPI:ユーザベースの直近期末時点ストック比率は約4割
- 推定KPI:ユーザベースの期末時点推定MRRは2019年21月期末時点で4.5億円
- 直近期末の有料アカウント数はSPEEDA3,123、NewsPicks14.7万。YoY成長率SPEEDA122%、NewsPicks154%。
- SPEEDAの海外ID数割合は2014年3月の2.9%から2019年12月末の12.1%まで増加。
- 全会員(無料+有料)に占める有料会員割合は2015年3月の0.87%から2019年12月末の3.14%まで増加
- ユーザベースの直近期末のARPAはSPEEDAが約12.1万円、NewsPicksが約2,400円。
- ユーザベースの従業員数は704人、最新のYoY伸び率は124%
- 最後に
- 最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
推定KPI:ユーザベースの直近期末時点ストック比率は約4割
まずはユーザベースの期末時点の推定ストック(月額課金)売上比率を見てみましょう。なお、ユーザベースのストック比率は、(SPEEDA事業売上高 + その他事業売上高)/売上高の式により算出しています。2018年のQuartz買収に伴い、クラウド事業売上比率は6割り超えから4割近い水準まで下がりました(ですが、こちらの推定方法は若干強引ですので、算出の前提は前回の記事をご覧ください)。
推定KPI:ユーザベースの期末時点推定MRRは2019年21月期末時点で4.5億円
続いて、ユーザベースの推定MRRについて述べます。なお、こちらは
- (SPEEDA事業売上高 + その他事業売上高) / 12(ヶ月)
により算出しています。こちらについては直近の成長率が加速しています。なお、ユーザベースは前回の記事でもご紹介した通り、MRRの推移を開示しています。開示資料によれば、MRR自身は直近の3年で、2億→3億→4.3億円ですので、大まかに上の推定方法で現時点では近い値が推定できそうですね。
直近期末の有料アカウント数はSPEEDA3,123、NewsPicks14.7万。YoY成長率SPEEDA122%、NewsPicks154%。
ユーザベースは複数のプロダクトを持っていますが、詳細のアカウント数を公開しているのは主要プロダクトのSPEEDAとNewsPicksのみとなっています。そこで、情報が公開されているSPEEDAとNews Picksについて見てみることにしましょう。はじめに、こちらのグラフは横軸が各会計年度末時点の有料アカウント数と伸び率です。SPEEDAとNewsPicksを比べると、SPEEDAは数千のオーダーであり、NewsPicksの10数万件に比べて圧倒的に数が小さいですね。成長率でみると、SPEEDAは対前年比率で120%程度で推移している一方で、NewsPicksについては成長度合いは大きく下がった一方で150%を超える成長率をここ3年間維持しています。では、四半期単位で推移を見てみましょう。
SPEEDAの海外ID数割合は2014年3月の2.9%から2019年12月末の12.1%まで増加。
はじめにSPEEDAのID数を見てみます。IDベースでは、海外のIDも増えており、2019年12月末には全SPEEDAIDに占める割合が12.1%まで増えているようです。海外、ということでどういう国で使うことができるのだろう、というのが気になって調べてみたところ、日本語/英語の選択が可能でした。企業の数字は基本的に同じはずなので、こちらを揃えることができれば、海外市場でも使うことは可能になる、ということなのでしょうか。有価証券報告書をみる限り、SPEEDAの中ではUZABASEが別途契約している情報ベンダー作成のレポートや業界レポートを追加オプションで購入することもできるようです。こちらは、おそらく元情報がある程度日本語になっているはずなので全てを翻訳することは大変だと思いますが、例えば機械翻訳をかけたり、人気コンテンツのみを優先的にローカライズ(現地の言語に合わせる)ことができれば、日本国内に止まらないサービス展開ができそうですね。
全会員(無料+有料)に占める有料会員割合は2015年3月の0.87%から2019年12月末の3.14%まで増加
次にNewsPicksの会員数を見てみます。会員数ベースでは、有料会員の割合が順調に伸びており、全会員(無料会員と有料会員ユーザーの和)に占める有料会員の割合は0.87%から3.14%にまで増加しました。ユーザー数の昨対増加率をみていくと、件数が少ない分有料のユーザーの方が変動が激しいですが、2019年9月末から2019年12月末にかけて急激に有料会員数が増えています。こちらは、有価証券報告書によれば、2019年9月末から有料会員として、法人向け有料課金事業である「NewsPicks for Business」の有料課金ユーザー数を含めているとのことなので、こちらが要因としてあげられそうです。
ユーザベースの直近期末のARPAはSPEEDAが約12.1万円、NewsPicksが約2,400円。
会員数の次はARPAを見てみましょう。先ほど紹介した会員数、ID数を元にSPEEDAとNewsPicksのARPAをそれぞれ求めものがこちらのグラフです。こちらは、SPEEDA事業、NewsPicks事業それぞれを、期末時点のID数、会員数で割ることによって算出しています。以上より、ざっくりとSPEEDAが10万円、NewsPicksが2,000円という価格帯にいると推定ができます。NewsPicksについては、2018年12月期末にARPAが上がっているように見えますが、これは分子であるNewsPicks事業の売上高にQuartz事業が入っているためであると推定できます。このため、2018年12月期末に一時的に価格が上がっているように見えますが、基本的にほとんど変わっていない、と考えて差し支えないでしょう。なお、有価証券報告書によれば、NewsPicksの価格は、
- プレミアム会員(オリジナル記事、海外の有料媒体の記事を閲覧可能):月額1,500円(年割は月額1,200円、学割は月額500円)
- アカデミア会員(プレミア会員+毎月一冊の書籍提供とオンラインでの動画講義):月額5,000円
という形になっています。NewsPicksの料金については、金額の詳細を公開している以上、そこまで大きく今後金額を変えることは難しいはず(値段をあげると解約率が増える、値段を下げると売上の成長率が下がる恐れがある)なので、ARPAが急激に変わることは想定しづらいです。
ユーザベースの従業員数は704人、最新のYoY伸び率は124%
最後に、ユーザベースの従業員数について述べます。2019年12月期で従業員数は704名。直近1年では124%の伸び率を示しています。グラフからは、NewsPicks事業の人員が一気に減ってQuartz事業が増えているように見えますが、これは元々2018年12月期末時点ではNewsPicks事業に含めていたQuartz事業をQuartz事業単体として切り出したことによるためですので、伸びとしては従来と同じペースだったのではないかと感じます。2017年と2018年の差分をみると、300人近い人員増加が起きていますが、これは買収とその他事業の人員増が影響しているようです。
最後に
日系企業がアメリカ企業を買収し、成長を続けるユーザベース。1年で倍近い従業員が増える、ということで事業運営の観点でも様々なチャレンジがあるのではないかと思いますが、日本から世界を獲ることにチャレンジをしている企業だと思っており、個人的には今後のスケールがとても楽しみな会社です。引き続き、UZABASEの決算資料を楽しみにしていこうと思います。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。