開示KPI:ラクスの直近期末時点ストック比率は約8割

まずはラクスの期末時点の推定ストック(月額課金)売上比率を見てみましょう。なお、ラクスのストック比率は、クラウド事業売上高/売上高の式により算出しています。2015年以降、クラウド事業売上比率は6割り超えから8割近い水準まで増え続けていますね。
推定KPI:ラクスの期末時点推定MRRは2020年3月期末時点で7.46億円

続いて、ラクスの推定MRRについて述べます。なお、こちらは
・クラウド関連事業売上 / 12(ヶ月)
により算出しています。こちらについてはなんと上場して5年近くが経過するにもかかわらず成長率が加速しています。このペースで成長が続くと次回の通期決算では、MRR9億円を突破しそうですね。
クラウド別の売上ランクは楽楽精算、メールディーラー、メール配信、楽楽販売、楽楽明細、その他

こちらは決算説明資料より抜粋してきたラクスのプロダクト別売上高です。2020年3月期末の売上高ランクは楽楽精算、メールディーラー、メール配信、楽楽販売、楽楽明細、その他となっていますが、2017年3月期から2018年3月期末にかけて、楽楽精算とメールディーラーの順位に逆転が生じていることがわかります。楽楽精算はすごい勢いで伸びていったということですね。
直近期末の楽楽精算売上高は39.3億円突破。YoY成長率は150%超えの高成長率を維持。

ラクスは全てのプロダクトの売上高や導入社数は公開していません。一方で、主要プロダクトである楽楽精算については、その売上高と社数を公開しています。公開資料によれば、楽楽精算については、直近期末の楽楽精算売上高は39.3億円突破。YoY成長率は150%超えの高成長率を維持しています。2015年の上場から5年が経とうとしているにもかかわらず、この成長率を実現できる、というのはすごいですね。
直近期末の楽楽精算導入社数は6,000社突破。YoY成長率は139%の高成長率を維持。

さて、楽楽精算については、このような推移になっています。直近期末には6,000社を突破し、昨年対比の成長率は139%という形で成長をしています。では続いて、顧客単価はいくらくらいの水準を推移しているのでしょうか。
直近期末の楽楽精算ARPAは5.4万円突破。ARPAのYoY成長率は110%の水準を維持。

ラクスは正確な楽楽精算の顧客単価は公開していません。一方、これまでにご紹介した楽楽精算の期末売上高、期末導入社数をもとに計算すると、ARPA(平均個社単価)は5.4万円でした。こちらは、ラクスの公開している最新の料金表を元に考えると、楽楽精算は初期費用10万円、最低金額3万円のようなので、大きく乖離はしていなそうです。ラクスは最近になってテレビCMの放送をしているようですので、中小企業の中でも相対的に大きな企業群にもプロダクトが浸透し始めている、ということなのでしょうか。

こちらは、目安として、いくらくらいの金額から始められるかをラクスのホームページより抜粋してきた資料です。月額2万円より始められるプロダクト、ということで中小企業にとってはありがたい価格設定ですね。

こちらは、2020年7月9日に公開された、ラクスが「ITR Market View:予算・経費・就業管理市場2020」を元に公開している資料を経年で調べたものです。直近期末の楽楽精算シェアは51%から75%まで成長しており、ほぼ独り勝ちしているレベルまで到達していることがわかります。
ラクスの従業員数は1,044人、最新のYoY伸び率は140%

最後に、ラクスの従業員数について述べます。2020年3月期で従業員数は1,044名。直近1年では140%の伸び率を示しています。過去このサイトで紹介してきたSaaS企業の中では直近通期ではサイボウズが最も従業員が多く、700人台だったんですが、それよりも多い、ということですごいですね。
最後に
企業サイズによらず必ず必要になる経費精算。この経費精算をお手頃価格で提供することで驚異的な伸びを続けているラクス。今後経費精算市場シェアをさらに手中におさめていくのか引き続き楽しみに注視していきたいと思います。プロダクトで市場シェアのほとんどを取ることができる、というのは本当に夢があって、SaaSって本当にいいものですね!最後まで読んでいただきありがとうございました。
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、
- ホリゾンタル・バーティカルSaaS
- エンタープライズとSMBSaaS
などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。