TL:DR;
- 2018年から2019年への売上高はBtoB-PF FOODはYoYで8.7%、BtoB-PF ES事業はYoYで26.1%の伸び
- 推定KPI推移(インフォマートの期末時点MRR)は7億円、契約社数は60,000社を突破
- インフォマートのARPU(2019年12月末時点)は〜50,000円/月
2018年から2019年への売上高はBtoB-PF FOODはYoYで8.7%、BtoB-PF ES事業はYoYで26.1%の伸び
ではまずは売上高の構成から読み解いていきましょう。2019年12月度のインフォマートの第四四半期発表の通期決算説明資料によれば、2018年から2019年への売上の伸びは、
- BtoB-PF FOOD事業:BtoB-PF受発注とBtoB-PF規格書が順調に増加
- BtoB-PF ES事業:BtoB-PF請求書の契約企業数が増加したことによる請求書の電子データ化/システム利用料による増加
がひっぱっているとのことです。なお、ES事業というのはどうやら電子商取引の略称として使われているようなのですが、EはおそらくElectronicsを指している一方で、Sが何を指しているかはわかりませんでした(なお、以下の調査内容に対してこちらの略称がわかっていないことは致命的になりませんので、SystemのS、ということに仮定してとりあえず進めます。もしかするとEはEmployeeの略なのかな…)。
2019年から事業セグメントは
- BtoB-PF FOOD
- BtoB-PF ES
- その他
の3つですが、提供している商品は以下の通り多岐にわたります。
推定KPI推移(インフォマートの期末時点MRR)は7億円を突破
次はインフォマートの推定MRRです。直近の2019年12月時点での推定MRRは7.1億円でした。なお、これらの算出根拠は
- (BtoB-PF FOOD事業の通期売上高 + BtoB-PF ES事業通期売上高) / 12
で算出しています。厳密には、これらの2事業セグメントの中には従量制になっている部分があるのですが、これらのニーズはならすと一定だろうというやや乱暴な仮定をおいて計算しています。※ただし、決算発表資料だとクラウド売上が95%であり、2019年の全売上に占めるBtoB-PF FOOD事業とBtoB-PF ES事業の売上の合算比率は99.5%だったので、致命的に仮定がずれてる訳ではなさそうです。
開示KPI:インフォマートの契約社数は60,000社を突破
続いて、インフォマートのサービス別契約者数を見てみましょう。まだそこまで件数のインパクトがないのか、競合対策なのかはわかりませんが、BtoBプラットフォーム契約書・見積書については契約社数は開示されていませんでした。この辺りは最近、アメリカのSaaSでもDocusignが、日本では弁護士ドットコムのCloudsignがすごい勢いで伸びていることも考えると今後はさらに利用が進んでいくのかもしれませんね。
契約社数は公開されているものだけでも昨年の12月末時点でなんと60,000件を突破しています。なお、インフォマートは「契約しなくても受領側としてインフォマートを使うことができる」仕組みを持っています。このため、2020年7月12日時点ではBtoBプラットフォーム請求書の利用企業数は432,079社いたところが、昨年12月末時点で有料契約社の数は4,447件となっています。したがって、これは単純に計算すると、1社契約に対して、その会社が100社の未契約企業と取引をしていることになります。もちろん、インフォマートのシステム以外の独自自社開発システムを使ったり、あるいは他のSaaSを使ったりして請求書を発行している企業はあるため、単純にこのすべてがTAMということはできませんが、ざっくりの無料ユーザーと有料ユーザー比率が1:100というようにも考えられますし、日本の企業群が役400万社いると考えると、その1/10にすでにリーチできているということも言えます。BtoB間の取引、という点で必ず必要となる部分に目をつけている企業ということで、とても面白いなと感じました。
参考:インフォマートのARPU(2019年12月末時点)は〜50,000円/月
続いて、インフォマートのARPUについて紹介します。2019年12月末のインフォマート社決算説明会資料にかなり詳しく金額の記載がありますが、下限は5,000円から高いもので50,000円、あとは商品によってはセットアップ費用がかかったり従量課金が発生するようになっているようですね。ここまで詳しく公開していただけると、いつどの商品を値上げしたのかなどもわかるのでとてもありがたいです。
加えて、同社の決算説明会資料にもある、事業の特徴「標準化 / デジタル化 / 低料率」のうち、「標準化」というところの「カスタマイズせずに多数企業の参加を促進してデファクト化を図る」という方針が大きく現れているんでしょうね(そうでないと、このような数万単位で社数を抱えることなんて不可能です)。価格帯としても、中小企業向けの価格設定であり、いわゆるエンタープライズであれば自前開発するところにSaaSとして入り込んでいく同社のやり方が見えて面白いです。
開示KPI推移(インフォマートの従業員数推移):全従業員は2019年12月時点で450人を突破
さて、ざっくり売上高85億円のインフォマート。一体何人の従業員でこれらの売上を上げているのでしょうか。2019年12月末の数字によると全従業員数は462人で、直近5年は前年比で103%〜116%程度の伸び率で推移しているようです。今後電子契約書などの流れもきているはずなので、次回決算でどの程度この辺りが触れられてくるのかは非常に楽しみなところです。
最後に
1998年に創業、2006年に東証マザーズ上場の老舗SaaSであるインフォマートについてご紹介しました。たくさんの商品ラインナップがあり、今後もさらに伸びていくであろうところがとても印象的でした。さらに、自社ホームページで利用社数も定期的に公開していたり、本当にSaaS各社の情報の出し方は様々な出し方/見せ方があるんですね。とても勉強になりました。今後も、いろいろなSaaSを調べていきたいと思います。SaaSって、本当にいいものですね!最後まで読んでいただきありがとうございました。
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SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
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