saaslife_大企業にいながらにしてできるSaaSスタートアップへの転職準備3選

大企業にいながらにしてできるSaaSスタートアップへの転職準備3選

TL:DR;

  1. 転職候補のSaaSスタートアップが本当にSaaSが適した事業モデルか見極めよう
  2. 今いる大企業の中で優秀な人と繋がっておこう
  3. 今いる大企業ののIR/KGI/KPIを隅から隅まで理解しておこう

はじめに

私が今所属するSaaSスタートアップに転職したころ、日本の資金調達環境は今ほどの活況はなく、SaaSもそこまで注目されていなかった。

このページにたどり着いた方は、ある程度SaaSスタートアップの転職に興味があるのだろうと思う。一方、SaaSスタートアップの本当にほしい情報はネットには出まわっていない。非上場会社である以上、事業数値向上に寄与しない情報を出回らせる必要がないからだ。

そこで、これまで私が体験したSaaSスタートアップの勤務経験を元に、あなたが転職を決断する前に何をしておくべきかを厳選してここに3つ記す。

(なお、自分は転職の際転職エージェントを利用したが、転職エージェントはSaaS特化型ではなく、ビジネスモデルをほとんど理解していなかった。したがって「人生の重要な決断をするんだ」と考えて以下を自分で調べて納得のいく答えを出すことを強くオススメする)


1.本当にそのサービスはSaaSである必要があるのか?を見極める

最近は、資金調達がバブリ気味になところと、財務が読みやすい性質(参考:過去記事)もあって、SaaSはVCからも大人気だ。実際、前田ヒロさんによるAll Star SaaS FUNDなるものも存在する。

このように大人気のSaaS。しかし、「それ、SaaSである必要あるの?」という観点が実証されないと、導入はされてもその後すごいスピードで解約が起こることを忘れてはいけない。経営的観点で考えると、使いもしないものにお金は払わない。利用しない物はオンプレだろうが、SaaSだろうが価値は等しくゼロなのである。

解約を起こさず使い続けてもらうためには大まかに以下の観点を満たしたプロダクトである必要がある。(全てが突出して高い必要はないが、これがバランスよく高い、もしくは振り切れていると最高だ)

  • 顧客(基本的に法人)の業務性質上、利用頻度が高い
  • 顧客のすごく重要なデータが溜まっていて、解約するとデータでアクセスできない
  • 顧客はすでに非効率な解決方法を保有もしくは発見しており、ソフトウェアで代替解決可能である

簡単に解説しよう。


顧客(基本的に法人)の業務性質上、利用頻度が高い

これは、議論の余地が少ないと思うが、「そもそも使われることが確約されていますよね」ということだ。いわばビジネスマンにとってのExcelやPowerPoint的な役割を担うことができているのか?ということである。ここに対してはyesと言うことができるように、社員に話を聞いてみたり、知り合いのツテをたどって情報収拾をすべきだ。


顧客のすごく重要なデータが溜まっていて、解約するとデータでアクセスできない

これは、解約防止にとても有効だ。例えば人事評価。人事評価は基本的に四半期、半年、年単位で行われるため、一部の人を除いて利用頻度は高いとは言い難い。しかし、過去の評価をもとに組織編成/役職/人材の配置を決めるためには、「過去の情報」にとても価値が出てくる。これらの情報は溜まれば溜まるほど価値を発揮する。この情報が解約に対して強力な抑止力になるのは想像に難くない。



顧客はすでに非効率な解決方法を保有もしくは発見しており、ソフトウェアで代替解決可能である

つまるところ、アカウント数による契約/一社一括導入関係によらず、最終的にSaaSを導入するのは法人単位になる。法人である以上、予算が明確に決まっており、そのSaaSに使うことのできる費用にはキャップがある。また、法人である以上、Business As Usualとして回すべき業務があり、この業務に対しては何らかの解決方法をその法人ができていると、SaaSを当てて予算の付け替えを起こしやすい。ここは法人営業では真新しい話ではないが、転職などの重要な決断をする際に曇りがち(例:会った人との相性が良さそうだと感じたので、など)なので、私は重要な観点だと思っている。


2. 大企業の中で優秀な人と繋がっておこう

次に、人編。「え、大企業の『外』じゃないの?」と思うかもしれない。これは「中」で正しい。理由は2つある。

  • 大企業は、スタートアップの最終形態。よって、あらゆるものが揃っている
  • 入社後の必要人材は、自分で集めるしかない。そういう人材が重宝される


大企業は、スタートアップの最終形態。よって、あらゆるものが揃っている

結局どれ綺麗事を言おうとも、スタートアップは投資家から事業成長を求められている。成長というのは売上を増やすことで、売上を増やすことは人が増えるということだ。今は小さくカオスな会社も、人が増えるにつれ制度ができ、りん議ができ、決裁が必要になり、という流れに抗うことができない。今の大企業は全て昔スタートアップだった。この事実に目を向けると、大企業は、「最終ゴールはこれを目指すんだな」という意味ではとても有効だということがわかる。なお、私はいわゆる日本の製造業を中心とした大企業には在籍したことがないので、ここでいう大企業というのは製造業などは指していない。基本的にはDeNa、サイバーエージェントなどのIT企業を指す。


この点を踏まえると、大企業の中に当たり前に福利厚生や制度として存在しているものが、どういう前提で出来上がったのかを日々検討して、実装していくのがスタートアップの醍醐味だったりやりがいなんだな、と私は思っている。また、自分がスタートアップの中で働いている中で、大企業にまだいる同期に、「そういえばあの制度ってどうなってて、どう運用されてたっけ?」と聞いて、解決の糸口を得たことは計り知れない。自分から相手に提供できるものがあれば、優秀な人との繋がりは常に自分にとってプラスに働く。



入社後の必要人材は、自分で集めるしかない。そういう人材が重宝される

結局、スタートアップもある数を越えると人事機能が「なんでもバックオフィスさん」から切り出される事になる。実際に人事がいることの恩恵は計り知れない。だが、彼らはキャラクターとしての人材の見極めには長ける一方で、事業理解については苦手としていることが多い。このため、本当に自分が働きやすい環境を作るには、「以前共に働いたことのある人を引っ張ってくる」というのがもっとも効率がいいし、信用できる手段だ。そこで、一緒に仕事を優秀な人とする機会を逃さなければ、回り回ってスタートアップ入社後に、また働くことができる可能性はある。私も今の会社に元同僚がいるが、ベースとしての信頼があるので、コミュニケーションコストが下がるのに助かっている。


3. 自社のIR/KGI/KPIを隅から隅まで理解しておこう

さて、これは以外に軽視されがちなんだが、「自分の会社、本当に辞める必要あるんでしたっけ?」という観点だ。比較するのは大企業とスタートアップなので、メジャーリーガーと高校球児を比較するみたいなものだというのはわかっているが、もしもいい仕事をしたいとあなたが思っているなら、当たり前のようにこの辺は押さえておきたい。

これは、簿記の勉強をしろという話ではない。つまるところビジネスはどうやって回っているのか、なぜ組織がこうなっているのか、という現状を数字で理解するための手段として有効だからだ。残念ながら、日本の大企業にいると、部課長レベルではP/Lまでを理解していればそれだけでいいというところも多いはずだ。ただ、ここをP/L、B/S、C/Fで理解しておくことによって、「案外うちってすごく儲かってるな」ということに改めて気づくことができたり、例えば「自社のサービスをSaaSにしたらどうなるのか?」ということを考えて見て、起案したりすることもできるはずなのである。スタートアップへの転職を進めるような記事ではあるが、ここはフラットに考えたほうがいいと思う。


以上、自分の経験をもとに、今の経験を元に、大企業からもう一度別のSaaSに転職するとしたら、この辺りを重点的にチェックするかなとは思っていることをまとめた。なお、執筆の動機は、

よく知り合いに聞かれるので、テンプレ化したかった

というのが本音だ。


最後に

ここまで好き放題書いた。これまで、面接・実務含めてレイヤーがハイレイヤーから現場レイヤーまで様々な方を見てきた。が、身も蓋もない話をすれば、最初の段階で上記全てができている人は見たことがない。このため、自分の得意な領域を選んでみて、参考にしていただけると幸いである。異論、反論は積極的に認めます。


オススメ本

「3. 自社のIR/KGI/KPIを隅から隅まで理解しておこう」のやり方として、私がこれまで読んだ本の中で、一番いいなと思った本をあげておく。繰り返すが、簿記の勉強をする必要は転職先を適切に選定する観点だと一切必要ないので時間を有効に使って欲しい。