TL:DR;
- Sansanの解約率は1.0%未満
- 契約件数、推定MRR、推定ARPUともに順調に増加中
- 人員も増えており、構成比率はほぼ不変
さて、前回に引き続き、SansanのKPIを紹介します。SaaS企業によっては、公開しているKPIと非公開のKPIがあるので、公開されているものは公開されているもの、推定で算出しているものは推定値と明記して以下紹介します。
KPI推移(Sansanの解約率)
まずは気になる解約率から。2019年5月末時点情報では、年間の解約率平均は0.80%未満で1%を切っています。過去に紹介したHENNGEほどは低くないですが、かなり低い水準と言っても良いのではないでしょうか。名刺情報は企業に基本的に溜まり続け、増え続けることに加えて、名刺を取り込んだ後工程でCRMとしてのSalesforce、MA(Marketing Automation)のPadot/Marketoとの連携をしている企業もかなりの数いることを考えると、プロダクトの性質的にかなり解約しづらい良いプロダクトということが言えるでしょう。
KPI推移(Sansanの契約件数推移と伸び率)
次に、気になる契約件数の推移です。契約件数は毎年増え続けており、2014年から2015年でもYoYで150%の伸び、直近でも110%近い水準で増えています。
KPI推移(Sansanの推定MRR)
次に気になるSansanの推定MRRです。ここで推定としているのは、Sansan自身はMRRを開示していないためです。推定方法は売上高を12で割り算して算出しています。ここについては、厳密にはプロフェッショナルサービス(ショットで発生する売上)と継続課金による売上高の2パターンあるので正確には不明ですが、
- 初期設定ほぼ不要で始めることができ、プロフェッショナルサービスが介在する要素があまりない
- CRMやMAとの接続はSalesforce認定ベンダーやMAのベンダーが実施し、Sansanが介在する要素が少ない
ことからある程度妥当な推定ではないでしょうか。この基準で算出したMRRもYoYで130%超えの水準で伸び続けています。
KPI推移(Sansanの推定ARPU)
MRRだと契約件数が増えてMRRが上がっているのか推定ARPU(Average Revenue Per User:アープと呼び一社あたりの売上を表します)を見てみましょう。なお、このARPUはMRRを単純に契約件数で割り算して算出しています。ARPUは直近の2019年5月期で約15万の水準にあり、YoYでは120%超えの伸び率です。順調に社数あたりの単価をあげることができている、ということが言えるでしょう。(なお、社数単価をあげるには、社員数の多い大企業に入れるか、単純に値上げを行うかの2通りがあります)
おまけ:Sansanの従業員数推移
さて、最後にSansanの事業を構成する事業部別人数を見てみましょう。2019年5月期時点で全従業員は500人を超えており、全社(共通)・eight事業・Sansan事業それぞれの構成比率はほぼ不変です。Sansan:eightの売上構成比率がほとんどがSansanであることから考えると、eight事業部の人員の比率が多いように見えますが、新規で球速立ち上げ中の事業ということで多くの人員を割り当てているのではないでしょうか。
最後に
いやー、Sansanさんからの数値からは学ぶことだらけで本当に勉強になります。
- 如何にして解約率が低い仕組みを作り出すか
- 新規事業の売上高比率/人員比率がどの程度か
あたりはかなり参考になるのではないでしょうか。様々な数字によって事業の状況を推定でき、比較によって新しい発見が毎回ある。SaaSって、本当にいいものですね!
最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝
SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。
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