Adobeに買収されたSaaS企業、Marketoの上場直前3期のサブスク比率と年間売上額 / 導入社数 / MRR

saaslife_Adobeに買収されたMarketoの上場直前3期のサブスク比率と年間売上額 / 導入社数 /MRR 海外SaaS
saaslife_Adobeに買収されたMarketoの上場直前3期のサブスク比率と年間売上額 / 導入社数 /MRR

TL;DR:

  • Form S-1によると2013年のNASDAQ市場上場直前期のMarketoの年間売り上げは約60億円
  • 上場直前の導入社数は2000社超え
  • 上場直前の推定MRR単価は21.9万~219.8万円/社

Marketoの歴史

saaslife_Marketo親会社の推移
saaslife_Marketo親会社の推移

2018年、Adobeに最近買収されたニュースがついこないだのことのようだ。

WikipediaのMarketoの項目によればMarketoはEpiphanyメンバーのPhil Fernandez、Jon Miller、David Morandiにより2006年に操業された。

その後

  • 2008年にリードマネジメント
  • 2009年にセールス・インサイト
  • 2010年に収益分析

のプロダクトを矢継ぎ早に公開している。

その後2013年にNASDAQ市場に創業後7年目で上場し、その後は

  • 2016年にビスタ・エクイティパートナーズ
  • 2018年にAdobe

に買収された。個人的な感想でいうと、前職でまさにMaketoで配信したメルマガの効果の詳細をAdobeのアナリティクスツールで分析していたので、さらに連携がうまく進むシナジーを期待した買収なんだろうなと勝手に胸熱に感じたのを覚えている。

Marketoのプロダクトで何ができるのか?

saaslife_Marketoプロダクト説明ページ(2009年9月7日時点)

さて、一体Marketoで何ができるのだろうか。デジタルマーケティングに馴染みの無い方に向けて超ざっくりと解説すると、Marketoは

  • 自社ウェブサイト
  • 広告キャンペーン用のランディングページ
  • ソーシャルメディア

など、さまざまにユーザー接点があったBtoBマーケティングの領域において、各種ユーザー接点を把握してその効果分析や、(メルマガを使った)ターゲティングマーケティングを行うことができるツールであり、マーケターにとってありがたいツールである。

例えば前職では、それなりの大企業だったのだが、

メルマガを自社ツールで送ると、抽出条件/送信テンプレートなどを都度エンジニアに依頼することが必要になり、なかなかに施策を試すことができない

CRMマーケティングに関わっていた某大企業勤務の前職同僚談

課題があった。そこを月あたり数十万円で解消できるので、

  • マーケターは自分の考える施策をすぐに試すことができる
  • エンジニアの工数を前提にしなくていい

メリットがあり、導入に至った経緯があった。それでは以降で売上とSaaS関連指標情報を読み解く。

会社の売上:上場直前のMarketoはサブスクリプション比率90%、売上は60億に到達

saaslife_Marketo上場前3年の売上推移(単位:億円、1USD=100JPYで換算)
saaslife_Marketo上場前3年の売上推移(単位:億円、1USD=100JPYで換算)

FormS-1によれば、Marketoの売上は

  • FY2011 -> FY2012で221%
  • FY2012 -> FY2013で176%

と毎年2倍近い成長を続けている。

FormS-1に公開されていた情報で、

  • サブスクリプション(S-1内では、”Subscription and support”)
  • プロフェッショナルサービス(“Professional services and other”)

がある。これらはそれぞれ、

  • いわゆるMRRに該当する、Marketoのソフトウェア利用、またはそのサポートに伴って発生する月額費用
  • Marketoソフトウェアのセットアップにかかる費用でショット(1回限り)で発生

となっており、サブスクリプション比率が高いほど純度の高いSaaSということになる。

サブスクリプション比率は低下傾向にあれど、FY2011->FY2012で共通して90%を超える水準だった。(サブスクリプション比率が下がっている理由は、MRRのパートにて後述)

上場直前の導入社数は2000社超え

saaslife_Marketo上場前3年の導入社数(FY2010は非公開につき推定値)
saaslife_Marketo上場前3年の導入社数(FY2010は非公開につき推定値)

続いて、導入社数を見てみよう。

Form S-1の中では、”over x companies(xが実数)”という表現をしており、下限の社数を以下の通りで公開していた。

  • FY2009:200
  • FY2011:1,000
  • FY2012:2,000

なお、FY2011->FY2012で数字が2倍の成長をしていることから、上のグラフはFY2010の社数をFY2009->FY2010で2倍社数が伸びたという仮定をおいている。こちらも売上の伸びに迫る大きな伸び率である。

上場直前のMarketoMRR単価は推定21.9万~219.8万/社

saaslife_Marketo上場前3年のMRR平均単価/社(1USD=100JPYで換算)
saaslife_Marketo上場前3年のMRR平均単価/社(1USD=100JPYで換算)

グラフは冒頭の売上(の内、サブスクリプション部分のみ)/12(ヶ月)/社数で求めたMRRである。若干の低下傾向にはあるが、20万~30万円の間を推移している、という感じだろうか。

なお、これは推定になるが、

  • Marketo導入の間口をさらに広げるさらなる廉価版の投入 や
  • 海外への展開に伴う価格体系の若干の変更

があったのではないかと管理人SLは推測している。

また、プロフェッショナルサービスの比率が増えているのは、

  • 大企業など、既存で大きなシステムが回っていて、そこの中にMarketoを組み込む

案件が増えていることを表している。

まとめ(TL;DR:の再掲)

  • Form S-1によると2013年のNASDAQ市場上場直前期のMarketoの年間売り上げは約60億円
  • 上場直前の導入社数は2000社超え
  • 上場直前の推定MRR単価は21.9万~219.8万円/社

今後もSalesforceを筆頭に、他のSaaSのKGI/KPI推移を調べた内容を紹介していくハード・コアなブログにしていこうと思っています。

最後にSaaSを理解するための本のご紹介と宣伝

SaaSの本質であるリード生成、商談獲得、商談受注までのプロセスを表す一連の流れを指し、Salesforce、Marketoで勤務した経験を持つ福田氏による名著です。基本的なSaaSオペレーションの諸概念について、簡単な言葉で表現してくれており、SaaSの全体観を掴むのに適しています(なお、SaaS全体のおすすめ本はこちらにまとめています)。

ちなみに2021年以降にIPOしたSaaS関連各社の四半期単位の各社については、本サイトをまとめた書籍を執筆しています。(画像クリックでamazonの新しいタブが開きます。)当該期間にIPOした新規上場SaaSの分類として、

  • ホリゾンタル・バーティカルSaaS
  • エンタープライズとSMBSaaS

などの分類とまた、その他関連SaaS書籍をまとめておきましたので、興味のある方は以下よりご覧ください。なお、リンクのクリックで個社の過去記事をご覧いただくこともできます。

時期表紙取扱SaaSとそのリンク(上場日付順)
FY2022Q2 セカンドサイトアナリティカ
サークレイス
ペットゴー
トリプルアイズ
ヌーラボ
FY2022Q1 エッジテクノロジー
カジー
マーキュリーリアルテックイノベーター
ビーウィズ
FY2021Q4シンク
フォトシンス
GRCS
サイエンスアーツ
ラストワンマイル
スローガン
ボードルア
フレクト
ネットプロテクションズ
トゥルーデータ
ブロードエンタープライズ
JDSC
ヒュウガプライマリケア
グローバルセキュリティエキスパート
ラバブルマーケティンググループ
サインド
網屋
ザクー
フィナテキストホールディングス
エクサウィザーズ
ハイブリッドテクノロジーズ
エフ・コード
CS-C
ニフティライフスタイル
セキュア
FY2021Q3ラキール
フューチャーリンクネットワーク
モビルス
ユミルリンク
ロボットペイメント
セーフィー
FY2021Q2ビジョナル
ペイロール
プラスアルファ・コンサルティング
サイバートラスト
ファブリカコミュニケーションズ
ネオマーケティング
FY2021Q1ワカル
ウイングアーク1st
ベビーカレンダー
スパイダープラス
エイピアー
出版履歴

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SaaSについて、

・SaaSとオンプレミス型の違いは何か

・SMBとエンタープライズ

・ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaS

・MRRとARR、単価と社数の関係

・IPOした各社のプロダクト特徴や沿革

を各社の公開情報(IR)からまとめた電子書籍を四半期に一度発行しています。

SaaSビジネスの全体像を掴むためであれば1冊読んでいただければ十分です。

各社IRを見たら載っている、など辛辣なレビューもいただいてます。

良いレビューも悪いレビューも受け止めて今後も内容の充実に努めていきます。

が、IRを個別に見なくても全体像を把握できるようにする目的でまとめています。

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